2006年11月09日

役員給与

会社と役員は委任関係

一般の従業員は会社と雇用関係にあるのに対し、
会社と役員は委任関係にあります。

役員は、株主によって選ばれ、
その委任に基づいて業務を執行する立場にあります。

その対価として定期的に報酬を受けとりますが、
自らの報酬をある程度自由に決定できる立場でもあります。

このような役員の立場を考えると役員に対する報酬を
無制限に損金算入(税金計算上の経費)することは
妥当でないということで
税法では役員給与についての損金算入を制限しています。

税法における役員

会社法では役員と言うと、
取締役、執行役、監査役や会計参与などのことを言いますが、
法人税法における役員とは

★法人の取締役、執行役、監査役、会計参与、理事、監事および清算人
★法人の使用人以外でその法人の経営に従事している人
★同族会社の使用人のうち、特定株主等でその法人の経営に従事している人
となっています。

つまり役員でなくても役員とみなされる人がいることになります。

みなし役員

会社法等の役員でなくても法人の使用人以外で
会社経営に従事している人が税法上は役員とみなされます。

例えば、
▲総裁、副総裁、会長、副会長、理事長、
組合長、業務執行社員、代表者や
▲相談役、顧問などで
実質的に経営に従事していると認められる人が
税法上は役員とみなされます。

ここで、今まで出てきた用語の説明をしたいと思います。
(説明自体も解りにくいと思いますが
おおよそのニュアンスが掴めればOKです!!)

同族会社

同族会社というのは、
●株主や株主と特別な関係がある人や法人を
1つの株主グループとした場合に
●上位3つまでの株主グループの所有株式が
●その会社の発行済株式の50%以上の会社のことです。

株主と特別な関係にある人・法人

株主と特別な関係にある人には、以下の5種類があります。

1.親族(配偶者や6親等内の血族、3親等内の姻族)
2.婚姻していないが事実上婚姻関係にある人
3.株主の個人的な使用人
4.株主からもらうお金などで生活している人
(同居しているかどうかは関係ありません)
5.2.から4.の人と生計を同じくしている人

が株主と特別な関係にある人とされます。

株主と特別な関係にある法人とは、

1.株主の一人と特別な関係のある人とで
他の会社の株式の50%以上持っている場合の他の会社

2.株主+特別な関係のある人+1.の会社で
他の会社の株式の50%以上持っている場合の他の会社

3.株主+特別な関係のある人+1.+2.で
他の会社の株式の50%以上を持っている場合の他の会社

のことを言います。

つまり、同族会社かどうかを判断する際には、
本人、配偶者、親族だけでなく、
生計を同じにしている人や、
これらの人達で50%以上の株を持っている会社を
「一人の株主」として扱います。

特定株主等

@同族会社の場合は、例え使用人であっても
A特定株主等でB経営に従事している場合は、
役員として扱われますが、

特定株主等とは、

1.同族会社の持株割合が多い株主グループから
順番に持株割合を足していって、
持株割合が最初に50%を超えるところまで足していった場合に、
これらのいずれかの株主グループに属していて
2.その人の属する株主グループの持株割合が10%を超え
3.その人と配偶者、その人と配偶者の持株割合の合計が
50%を超える法人の持株割合を合計して5%を超える場合

上記3つの要件に当てはまる人は特定株主等となります。

ここにAさんという人がいるとします。

Aさんは、B社という同族会社で働いていますが、役員ではありません。
また、Aさんは経営に従事しています。

B社の株式を

Aさん3%
配偶者5%
Aさんと配偶者が合計で60%出資している会社(C社)が3%
持っているとします。

B社の株主グループのうち上位の3つは次の通りとします。
@株主グループ1  25%
A株主グループ2  20%
B株主グループ3  11% (Aさんのグループ)

Aさんは株主グループ3に入っているとすると

1.最初に50%になるまでの上位3位までの株主グループに入っています。
2.グループ3の持株数は11%>10%です。
3.Aさん+配偶者+C社>5%です。

これでAさんは、特殊株主等と判定されます。

この場合、Aさんは会社の経営に従事していますので
役員とみなされることとなります。

ちなみに、みなし役員の判定で
どれかひとつでも要件に該当しない場合は、みなし役員とはされません。

さて、具体的に役員給与についてのお話しに入る前に
もう一つ知っておかなければならない言葉があります。

使用人兼務役員

法人税法上の使用人兼務役員とされるには、
1.部長、課長などの使用人としての職制上の地位を有している
2.常時、使用人としての職務に従事している
3.社長、理事長などの特定の役員でないこと。
以上の3つの条件が揃っていなければなりません。

これら3つの条件全てに当てはまれば、
使用人兼務役員の使用人分の給与は、
普通の従業員と同じ扱いになります。

 特定の役員とは、社長、副社長、代表取締役、
専務取締役、常務取締役や法人の業務を執行していると認められる者、
代表権を有する者、業務執行社員、監査役、会計参与、
同族会社の役員で特定株主に該当する人などのことです。
また、取締役経理担当なども特定の役員となります。
  
「経営に従事する」とは

「経営に従事する」とは、
法人の主要な業務執行の意思決定に参画することです。

具体的には、経営方針、例えば資金計画、設備計画、販売計画などや
従業員の採用、給与などの決定等の人事計画などに
参画していることを言います。

単に上司の命令によって与えられた業務を遂行するに過ぎない場合は、
「経営に従事」には当たりません。

さて、これからは平成18年4月1日以後に開始する事業年度から適用される
役員給与に関する新しい規定についてお話ししていきます。

改正前の制度の概要

今までは、

1.役員報酬のうち不相当に高額な部分の金額
2.隠ぺい仮装経理により支給する役員報酬
3.役員賞与
は損金算入できませんでした。

これらのうち上の2つは改正後も変更はありませんが、
役員賞与は厳しい条件ですが、
要件を満たせば損金算入できることとなりました。

なお、使用人兼務役員の使用人分賞与を他の使用人の支給時期に支給し、
損金経理(費用や損失として経理すること)をしたときは
職務に対する相当額は、損金算入できるという規定は変わっていません。

また、役員退職給与は不相当に高額な部分の金額は
損金算入できない点は変更ありませんが、
損金経理の要件はなくなりました。

改正の概要

●役員給与の損金算入範囲の見直し

改正前は、役員給与が定期のものか臨時のものかによって
損金算入の可否を区別していましたが
改正後は、役員給与がその職務執行前に
あらかじめ支給時期・支給額が定められていたものであるかどうかよって
損金算入できるか否かを区別することとなりました。

●損金にできる役員給与の範囲

法人が役員に支給する給与のうち損金に出来るものは、
退職給与、ストック・オプション、
使用人兼務役員の使用人分給与を除けば、以下の給与となります。

支給時期が1月以下の一定期間ごとであり、
かつ、その事業年度の各支給時期の支給額が同額である給与
(定期同額給与)

所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与で
税務署長への届け出により事前に定められていることが確認できる給与
(事前確定届出給与)

同族会社でない法人が、
業務を執行する役員に支給する
利益に関する指標を基礎として算定される給与で、
有価証券報告書等での開示により
支給額の算定方法が事前に定められていることが確認できる給与
(利益連動給与)

なお、これらの役員給与であっても、以下は損金不算入となります。

1.不相当に高額な部分の金額
(例えば、100万円支給したうち
20万円が不相当に高額な部分の金額とされれば
20万円は損金になりません。)
2.隠ぺい仮装経理によるもの

また、特殊支配同族会社であれば
業務主宰役員(通常は代表者)に支給する給与のうち
給与所得控除相当分は損金になりません。
(適用除外規定があります。)

それでは、定期同額給与について
もう少し細かく見ていきたいと思います。

定期同額給与 

定期同額給与とは次の給与をいいます。

1.支給時期が1月以下の一定期間ごとで、
事業年度の各支給時期の支給額が同額の給与

1月以下の一定期間ごとということなので、
週給などでも毎回同額であれば定期同額給与になります。

▲注意点
従来、役員報酬は利益処分的性格のものでなければ
年1回払い等でも損金になりました。

しかし、今後は月給制にする(定期同額給与)か、
年1回のままなら「事前確定届出給与」として税務署長に届け出ないと
損金にならなくなります。
今まで、監査役報酬は年一回だったなどという会社では
充分注意が必要です。

2.支給時期が1月以下の一定期間ごとであるものの額が
事業年度開始の日から3月を経過する日(保険会社は4月を経過する日)まで
に改訂された場合における次の給与

@改訂前の支給時期の支給額が同額である給与
3月決算法人で6月株主総会の会社であれば4月分から6月分

A改訂以後の支給時期の支給額が同額である給与
3月決算法人で6月株主総会の会社であれば7月分から3月分

この規定により、従来は役員報酬を増額改訂し、
遡及増額分を一括支給した場合でも全額損金となりましたが、
今回の改正により遡及増額部分が損金とはならなくなります。

3.法人の経営状況が著しく悪化したことなどにより改訂がされた場合の
改訂前の同額給与と
改訂以後の同額給与

この場合、定期同額給与と認められるのは
役員報酬を減額する場合に限られます。
仮に元に戻した場合は、元に戻した分の金額が損金とはなりません。

例えば、3月決算法人で、当初役員報酬100万円、
資金繰りの悪化により7月より50万円に減額した場合は、
4月〜6月までの同額給与は100万円、
7月〜3月までの同額給与は50万円 とされます。
 
ここで、仮に9月から役員報酬を元の100万円に戻した場合は
次の様になります。

7月以降の定期同額給与と認められるのは、50万円ですので、
9月から3月までの7ヶ月間の「元に戻した部分」の合計額である

(100万円−50万円)×7ヶ月=350万円が損金とはなりません。

また、業績不振や不祥事等の責任を取って
一時的に役員報酬を減給した場合も同様に扱われます。

4.継続的に供与される経済的利益のうち、毎月おおむね一定のもの

役員のために社宅を借りている場合などが代表例です。
継続的でない場合等は、賞与と扱われ損金とならなくなります。
 
さて、次は「事前確定届出給与」についてお話していきます。

事前確定届出給与

「事前確定届出給与」とは、
「所定の時期に確定額を支給する旨の定め」に基づいて支給する給与で
職務執行開始日と会計期間開始日から3月経過日との早い日
(「届出期限」)までに、
次の事項を記載した書類を税務署長に届け出ている場合の給与のことです。
ただし、定期同額給与、利益連動給与は除きます。

なお、「事前確定届出給与の届出書」を郵送により提出する場合は、
消印の日に届け出があったものとして取扱われることとなっています。

例えば、総会開催日、職務執行開始日がともに6月25日の場合は、
郵送提出なら6月25日付の消印があれば期限内の届け出とされます。

■届出書への記載事項

●事前確定届出給与対象者の氏名・役職名

●支給時期・各支給時期の支給金額

●支給時期・支給金額を定めた日、定めを行った機関等
(株主総会、報酬委員会、取締役会など)

例)18年6月25日 株主総会 

●事前確定届出給与に係る職務執行開始日、職務執行期間

▲役員給与は定時株主総会から
次の定時株主総会までの職務執行の対価として決められますので、
通常は、株主総会開催の日=職務執行開始の日となると思われます。

しかし、役員給与は月払いのケースが多いと思いますので、
「職務執行開始日」を定時総会開催日以外に定めた場合は、
総会の翌月初日で、かつ、総会日と近接していれば認められるようです。

●事前確定届出給与につき定期同額給与としない理由、
支給時期を決めた理由

●事業年度開始の日の属する会計期間において、
事前確定届出給与対象者に事前確定届出給与と
事前確定届出給与以外の給与とを支給する場合の
事前確定届出給与以外の給与の支給時期・各支給時期の支給金額

※上記の事前確定届出給与以外の給与には、
○退職給与
○新株予約権による給与
○使用人兼務役員の使用人分給与 は含まれません。

●事前確定届出給与を支給する会計期間の直前の会計期間において
事前確定届出給与対象者に支給した給与がある場合の
支給時期・各支給時期の支給金額

●事前確定届出給与対象者以外の役員に対する給与の
支給時期・各支給時期の支給金額

※事前確定届出給与の支給対象者がいる場合は、
支給対象者以外の役員の給与データの提出も必要となります。

●その他参考となるべき事項 →
「所定の時期に確定額を支給する旨の定め」の写しを添付する。

■実際の支給額が異なった場合

●事前確定届出給与として損金算入できる給与は、
支給時期、支給金額が事前に確定し、
そのとおりに支給されるものに限ります。

●税務署長への届出額と実際支給額が異なる場合は、
事前に確定していたとはいえず、
事前確定届出給与に該当しないものと扱われ
支給した全額が損金算入できません。

●事前確定届出給与について、
届出期限までに届出がなかったことについて
税務署長がやむを得ない事情があると認めるときは、
届出期限までに届出があったものとして適用できる旨の規定が
設けられていますが、やむを得ない事情とは、
災害等により届出期限までに提出できなかった場合などに限られます。

■従来は、非常勤役員等に対して年一回報酬を支給する場合などでも、
利益処分的なものを除けば損金に出来ましたが、
今後は、「事前確定届出給与」として
税務署長への届出が必要となりました。


利益連動給与

■損金算入できる利益連動給与とは、

●同族会社以外の法人が
●業務執行役員に対して支給する
●利益に関する指標(営業利益、経常利益など)を
基礎として算定される給与で、
次の要件を満たすものをいいます。

但し、他の業務執行役員の全てに対しても
同様の要件を満たす利益連動給与を支給しなければ損金となりません。

1.その算定方法が、その事業年度の利益に関する指標
(有価証券報告書に記載されるものに限る)を基礎とした
次のものであること

●確定額を限度とし、他の業務執行役員と同じ算定方法であること。
●会計期間開始の日から3月経過日までに、
業務執行役員、業務執行役員の特殊関係者が委員でない
報酬委員会が決定していること
「その他これに準ずる適正な手続き」を経ていること。
●その内容が報酬委員会の決定等の日以後遅滞なく、
有価証券報告書・TDnet等で開示されていること。
→役員の肩書き別に算定方法の内容を開示する。

2.利益に関する指標の数値が確定した後1月以内に支払われ、
又は支払われる見込であること。

3.損金経理をすること。

■用語の説明

●ここでの業務執行役員とは、
「報酬委員会での決定などの適正な手続き終了の日に」
次に該当する役員のことをいいます。

▲取締役会設置会社の代表取締役、
取締役会決議で業務執行取締役に選定されたもの
▲委員会設置会社の執行役
▲上記役員に準ずる役員

●「確定額を限度」とは、
支給上限額を具体的金額で決めなければなりません
(例:100万円を限度とする)。
なお、現物支給などの経済的利益は
損金算入可能な利益連動給与に該当しません。

●「その他これに準ずる適正な手続き」とは、

☆株主総会の決議による決定

☆取締役会の決議による決定
【取締役会の諮問に応じ業務執行役員給与につき意見を述べる
3以上の外部委員から構成される報酬諮問委員会
(業務執行役員等が委員となっているものを除く)
の審議等を経たものに限る】

☆取締役会の決議による決定
【監査役会設置会社(業務執行役員関連者が
監査役となっているものを除く)であり、
監査役の過半数が算定方法につき
適正と認められる旨の書面を提出したものに限る】

●「利益に関する指標の数値が確定した時」

定時株主総会により計算書類が承認された時に
「利益に関する指標の数値が確定」します。

今回の利益連動給与は、
上場企業などの限られた企業でしか使えない規定でしたが、
従来は業績連動型報酬は原則として損金算入できませんでしたが、
今年度の改正により要件を満たせば損金算入が可能となったということで、
企業側にとってはプラスの改正でした。

さて、次回は18年度税制改正で最も悪評の高い、
企業側にとってマイナスの改正である
「特殊支配同族会社の業務主宰役員給与一部損金不算入」
についてお話しします。

特殊支配同族会社の業務主宰役員給与一部損金不算入

「特殊支配同族会社」が「業務主宰役員」に支給する給与のうち
「給与所得控除相当部分」の金額が損金算入されません。

ただし、「基準所得金額」が800万円以下の事業年度などは適用されません。

特殊支配同族会社とは、

同族会社の業務主宰役員と「業務主宰役員関連者」が
同族会社の発行済株式等の90%以上を有し、
かつ、
「常務従事役員」の過半数を占める場合
その他一定の場合に該当する同族会社のことです。
☆医療法人、宗教法人、学校法人などは対象外となります。

●「業務主宰役員」とは、
法人の業務を主宰する役員のことですが(そのままですね)
より具体的には、経営の最終判断を下したり、
金銭の使途の管理・指示をして
対外的・実質的に事業の中心となっている人のことです。

●「業務主宰役員関連者」とは、
業務主宰役員の親族などで役員である人や
業務主宰役員と役員である親族などで
「他の同族会社を支配している場合」のその他の同族会社などのことです。

●「同族会社を支配している場合」とは、
同族会社の発行済株式等(自己株式等を除く)の
90%以上を有する場合などが該当します。

「常務従事役員」とは、
会社の経営に関する業務を役員として実質的に、
日常継続的に遂行している役員。
基本的に他社との兼職をしていない常勤者で、
かつ、日々の業務で指示・伝達等を行なう役員。

監査役、会計参与は経営に従事していないため含まれない。
非常勤役員は含まれないケースが多いと思われる。
使用人兼務役員は、会社の経営に従事していることが明らかであれば
含まれると思われる。
相談役・顧問などは日常継続的に経営に携っていれば
常務に従事すると判断される。
税法上のいわゆる「みなし役員」も常務に従事していれば該当する。

■「給与所得控除相当部分」は、
その事業年度の業務主宰役員給与額
(業務主宰役員期間が1年未満の場合、業務主宰役員給与額÷12×従事月数)が

次のいずれに該当するかに応じ
それぞれ次の金額(業務主宰役員期間が1年未満の場合、
その金額÷12×従事月数)とされています。

★65万円以下である場合
業務主宰役員給与相当額
★65万円を超え180万円以下である場合
業務主宰役員給与額の40%相当額(65万円未満は65万円)
★180万円を超え360万円以下である場合
72万円+(業務主宰役員給与額−180万円)×30%
★360万円を超え660万円以下である場合
126万円+(業務主宰役員給与額−360万円)×20%
★660万円を超え1,000万円以下である場合
186万円+(業務主宰役員給与額−660万円)×10%
★1,000万円を超える場合
220万円+(業務主宰役員給与額−1,000万円)×5%

その事業年度に業務主宰役員に異動があったときは、
期末業務主宰役員及び期中業務主宰役員の
その事業年度の業務主宰役員給与額について
上記の計算をした金額の合計額を「給与所得控除相当部分」とする。

業務主宰役員がその事業年度の業務主宰役員であった期間に、
他の特殊支配同族会社の業務主宰役員給与額
(「合算対象給与額」)もある場合

1.その特殊支配同族会社での業務主宰役員給与額
(「対象給与額」)+合算対象給与額=業務主宰役員給与額

2.1.の金額に基づき、
「給与所得控除相当部分」の計算をした金額÷
(対象給与額+合算対象給与額)×対象給与額

この計算は、確定申告書の提出期限
(中間申告書の場合は、中間申告期限)までに、
合算対象給与額その他の事項を記載した書類を
税務署長に提出している場合に限り適用され、
合算対象給与額は、記載された金額が限度となる。

●他の特殊支配同族会社とは、
特殊支配同族会社の事業年度終了時に
特殊支配同族会社に該当することとなる他の同族会社をいう。

今回は、業務主宰役員給与の後半です。

■基準所得金額=(前三年以内の調整所得金額‐
前三年以内の調整欠損金額
‐過年度欠損金額の調整控除額)÷36×12

前3年以内に開始した各事業年度に特殊支配同族会社に該当しない
事業年度がある場合は、
該当しない直近の事業年度以前の事業年度は除いて計算します。

1.調整所得金額
 所得金額+業務主宰役員給与の損金算入額+青色欠損金の控除額
 又は、
 業務主宰役員給与の損金算入額−欠損金額
(欠損金額より業務主宰役員給与が多い場合)

2.調整欠損金額

欠損金額−損金算入業務主宰役員給与額を控除した金額
(欠損金額より業務主宰役員給与が少ない場合)

3.過年度欠損金額の調整控除額

 基準期間前の事業年度
(過去7年前まで、平成13年4月1日前に開始した事業年度については
5年前まで)の業務主宰役員給与分以外の繰越欠損金で一定の金額
(青色欠損金に限り、繰戻し還付を受けた金額を除く)

4.基準所得金額が次の金額である事業年度には適用されない。

(1)800万円以下である場合。

(2)800万円超3,000万円以下、かつ、
基準所得金額に占める基準期間の業務主宰役員給与平均額が
50%以下である場合。

(注)基準期間がない特殊支配同族会社は、
当年度の所得金額を基に同様の計算をして判定を行なう。
(当年度基準所得金額)

5.「業務主宰役員給与額」からは、
退職給与、損金算入されなかった金額を除く。

6.特殊支配同族会社は、
確定申告書に前3年基準所得金額又は
当年度基準所得金額の計算と損金不算入額の
計算明細書を添付しなければならない。

●適用関係
上記の改正は、平成18年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

■対策について

●持株比率90%以上対策

★第三者に株式を譲渡、第三者増資により
持株割合が90%未満となるようにする。

「業務提携のための持ち合い」、「従業員持株会の活用」、
「友人・知人などの第三者への譲渡
(実質的にオーナーが資金負担する場合を含む)」、
「増資」などの手法が考えられるが、

▲持ち合いやオーナーが資金提供をしての第三者への譲渡は
資金負担が生ずる。
▲相手方に資金負担が生ずる場合、
何らかの見返りを求めてくるケースが多いと思われる。

株式公開を目指しており、その実現可能性がある程度あれば別だが、
結局名義を借りてオーナーが資金を負担するケースが
多くなるのではないか。

いずれの方法も、経営に介入してくるなど後々トラブルの原因となり得る。

また、「経済的合理性」がないとして規定逃れと認定される可能性もある。

増資の場合は、持株比率にもよるが資本増強により財務的な安定度も増す。

発行価額の決定、割当先確保、経営への影響など課題はあるが、
譲渡の場合よりも「経済的合理性」云々で
規定逃れと判断される可能性は低いと思われる。

この規定の内容が明らかになってからの譲渡等や
持ち株比率90%未満ぎりぎりの場合は
心証的には疑念を持たれる可能性は高いし、
「行為計算の否認」規定もあるが、
税務当局もそう簡単には「経済的合理性」がないと断言できないであろう。

ただ、申告書等を通して規定逃れと推測されるケースの場合、
対策を施さない会社よりも
税務調査へ発展するケースが高くなるであろうし、
役員報酬以外の面でより厳しい調査が行われることも予想される。

資本金300万円の会社であれば、
友人から50万〜60万程度の出資をしてもらう、
株式を買ってもらうなどということは十分可能であろうが、
この手段は、いずれ来るであろう
経営危機を回避する際の最後の手段として残しておくべきであろう。

公開を目指している会社の場合、
ベンチャーキャピタルからの資金受入という選択肢もある。
また、公開を目指していなくとも配当を積極的に出すなど
相応の見返りがあれば
増資、譲渡ともに実現可能性はあると思う。

但し、いずれのケースも経営への介入・経営支配維持の困難化や
資金調達コストの増加などマイナス面もあるため、
ただ単にこの規定を逃れるためにはリスクが高いと考える。

●常時従事役員割合50%超対策

★常時従事役員を1人増やせば良いケースであれば、
部長クラスを取締役○○担当とし
その上で、常務に従事する役員である外観を調えれば、
この規定から逃れることは十分可能と思われる。

この場合も、経営権確保に支障をきたす恐れがあるし、
使用人兼務役員として使用人分賞与を支給等してきた場合には
「事前確定届出給与」などを活用した賞与への切り替えが必要となったり、

賞与分を月額報酬に振り分ける等の措置が必要となってくる。

また、常時従事役員となれば
雇用保険からはずれなければならないこと等から
退職時などのトラブルのもととなりかねない。

★外部から新たに常務従事役員を迎え入れる場合、
人件費負担が増加するため、この規定の回避はできても、
回避できた税額以上の支出が必要となると思われるため
それほどの実益は期待できない。

■特殊支配同族会社のままの場合

過年度の基準所得金額を変えることはできないが、
将来の基準所得金額となる
平成18年4月以降に開始する事業年度での対策は可能であろうか?

●基準所得金額は、
単純化すれば「所得金額+業務主宰役員給与」で計算されるが
所得金額=「当期純利益+法人税住民税+交際費の10%
(資本金1億円以下で交際費400万以下の場合)±○○円」とすると

☆800万円以下の適用除外基準は、
業務主宰役員給与が年額800万円程度まで達した時点で該当しなくなる。

☆800万円超3,000万円以下で業務主宰役員給与が
基準所得金額の50%以下という基準の場合は、
仮に所得金額500万円あれば
業務主宰役員給与が500万円を超えれば
業務主宰役員給与が50%以下とならないため適用除外とはならない。

☆業務主宰役員給与が年間1500万円を超える場合は、
過去3年間の平均欠損金が700万円超なければ100%損金不算入となる。

事業を継続的に発展させつつ、毎年の所得や業務主宰役員報酬を、
規定逃れのために調整することは非常に困難であると考えられる。

■結論■
事業発展のための常務従事役員の採用、
事業拡大のための第三者増資などが主目的で、
副産物としての規定回避でもなければ、
企業経営にとってのプラスとはならないのではないか。

「特殊支配同族会社の業務主宰役員給与の損金不算入」の
株式所有割合が90%以上というのが非常に気になっています。
個人的には、50%まではいかないまでも遅かれ早かれ
この割合は段階的に下がっていくのではないかと予想しています。

これから事業を始められる方、法人成りを検討されている方は
従来の様に節税のためだけに法人設立するという選択肢は、
頭の中から消したほうが良いでしょう。

少しの努力で損金不算入要件がクリアできるのであれば、
この規定を外れるための努力はすべきだとは思いますが、
要件クリアがかなり厳しいようであれば、
その努力を事業好転の為に振り向ける方がより良い選択だと思います。

役員退職給与

次は役員退職給与についてお話したいと想います。
役員退職給与は、高額となることが多いことから
何かと税務上トラブルになりがちです。
これから役員退職給与について
是非知っておいて頂きたい事を何点かお話ししていきます。

■退職給与のうち不相当に高額な部分の金額は損金になりません。

●不相当に高額かどうかは、次の基準により判断します。

☆実質基準

1.業務に従事した期間(単純に勤続期間の長さのみではなく、
職位によって責任の重さなども違って来ますから、
勤続年数を職位による係数などで修正するのが一般的です。)

2.退職の事情(責任を問われて退職した場合などは、
減額もあり得ます。)

3.同種同規模の類似法人の役員に対する
退職給与の支給状況
(類似業種の役員の支給例と照らし合わせて検討します。)

4.法人の収益の状況、使用人への
退職給与の支給状況等なども考慮されます。

☆形式基準

1.功績倍率法

 役員退職給与の適正額=最終報酬月額×勤続年数×類似法人の功績倍率(※)

(※)功績倍率=退職給与の額/最終報酬月額×勤続年数

※功績倍率が3倍位までは過大ではないと言われています。

(例)3倍=3,000万円/100万円×10年

2.1年当たり平均額法(最終報酬月額が著しく低い場合)

役員退職給与の適正額=比準法人の1年当たり退職給与額×勤続年数

例えば、長年、代表取締役であった創業者が、
退職時には非常勤取締役として
相当に減額した役員報酬しか受け取っていなかったような場合などは
この方法で計算したりします。

■今まで、役員退職給与は必ず損金経理
(費用や損失として経理すること)が損金算入するための条件でしたが、
平成18年の税制改正で損金経理の要件はなくなりました。

ところで退職給与とはどの範囲までのものを言うのでしょうか?

基本的には、退職に伴って支給される全ての給与なのですが、
退職に伴って支給されるものであっても、
その性質が見舞金、福利厚生費、慰謝料などは
退職給与に該当しないことになっています。

■例えば、死亡により退職した場合の弔慰金は、
どのように取扱われるのでしょうか?

●業務上の死亡の場合は、賞与を除く普通給与の3年分までは
退職金としては扱わないようです。

●業務上の死亡以外では、賞与を除く普通給与の6ヶ月分を
退職金として取扱わないといわれています。

※業務上の死亡により退職した場合の弔慰金が、
退職金なのか否か、退職金でなければいくらまでが退職金でないのかなど
法律などにも規定がありません。

上記は、相続税法を参考にしているものですので
絶対というものではありませんが、今のところは大丈夫と思われます。

■役員の分掌変更の場合

会社から退職はしない場合であっても、
役員の分掌変更により、その地位が激変したときは、
実質的に退職したとして、(未払でなく)現実に支給することを条件に
退職給与として取扱うこともできることとなっています。

1.常勤役員が非常勤役員になったり、
(代表権があったり
実質的に経営上の主要な地位を占めると認められる場合はダメです。)
取締役が監査役になった場合(実質的に経営上の主要な地位にあったり、
同族会社の特定株主等は除きます)


2.分掌変更後の報酬がおおむね50%以上減少した場合。

※上記に該当すれば必ず退職金として扱われる訳ではありません。

☆つい先日、常勤役員から非常勤役員となり、
かつ、報酬も95万から45万へ減額した役員への退職金を賞与とした
税務当局の主張を認める判決が出ています。
(地裁の判決ですので、今後どうなりますやら)

■分割支給をする場合

資金繰りなどの問題から分割支給する場合、
あまりに長期間になると退職年金と判定されてしまいます。
このように判定された場合、
会社にとっても税金を前倒しに支払わなければならなくなりますし、
退職金を受け取る人の税金も多くなってしまいます。

退職金として扱ってもらえるのは4年間くらいが
ギリギリと言われていますので、
少し余裕を見て3年間位で払い終わる金額に留めた方が賢明と思われます。

■役員退職給与規程を整備する

役員退職金に関して中小企業で一番問題となるのが、
「役員退職給与規程」が未整備であることが多いという点です。
特に、役員の方が急に亡くなられた場合など
支給した退職給与が否認されたり、
利益調整をしたのではないかと疑われることがたびたびあるようですので、
役員退職金を支払う考えがあるのであれば、
出来るだけ早く規程の整備をした方がいいでしょう。

「事前確定届出給与」は、
役員賞与の損金算入が出来るという餌を使うことで、
事前に役員給与を届出させ、
役員給与を使った事後的な利益や納税額の調整を抑えるための制度では?
との見方もできます。
(びっくりされる方もいらっしゃると思いますが、
中小企業では、結構やっています。)

悲観的な話しで申し訳ないのですが、
そう遠くない将来に「定期同額給与」のみを支給する会社に対しても
税務当局は事前届出を求めてくるのではと予想しています。

もし、これが現実のものとなると、
今までの様に議事録等を税務調査間際にあわてて作成するのではなく
定期的に作成しなければならなくなりますし、
役員給与を利用しての小手先の決算対策もできなくなります。

もうすぐ中小企業にも透明性の高い経営が求められる時代が
やって来るはずです。

posted by 石井敬税理士事務所(横浜、横浜市、神奈川県、神奈川、税理士、税理士事務所、会計事務所、関内、馬車道、みなとみらい、桜木町) at 00:59| 神奈川 晴れ| Comment(0) | TrackBack(0) | 税金 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス: [必須入力]

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/27063264
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック